ことわざ辞典を読んでいると結構いいことが書いています。
そのわりに日常会話で使える機会が訪れないのは惜しいと思います。
そこで、今回は会話になるべくたくさんのことわざを取り入れることに挑戦します。


◆1日目
 まずはメジャーなことわざからチャレンジ。
 朝、会社に行ってことわざのチャンスを狙う。今日は朝からお客様の流れが多く、ばたばたしている。プレゼント用に包装を頼まれた先輩(普段はラッピングの女王と呼ばれている)が、急ぐあまりに包装紙を勢いよく破いてしまった。
 チャンス、と思い「河童の川流れですね!」と声をかけた。(得意な事なのに、油断して失敗してしまう事を言います)
 「はあ?」イライラ絶頂の時に声をかけてしまった事+生意気な物言いに聞こえたらしく、彼女は明らかに怒っている。
 「いえ、あの…猿も木から落ちる、って感じ?」ひるまずに付け加えると完璧無視された。
 職場での立場を失ってまで続ける企画か、よく考えたいと思う。

◆2日目
 やっぱりこの企画は続けようと決心した。ただし、他人に対してことわざを使うとえらそうに聞こえることがわかったので今日は少し使い方を変えてみたいと思う。
 先輩に質問をする時に、「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥、ですから!」と胸を張って言うと、「あんた昨日からやたらことざわ使ってない?気のせい?」とつっこまれた。
 ラッピングの女王はまだ昨日のことを根に持っているらしい。いくらなんでもここでことわざを言う勇気はないので「すみませんです」と謝り終了。
 もうラッピングの女王には何も言うまい。

◆3日目
 やっぱりここは年輩の上司に使ってみようと再再チャレンジ。最近、ご近所のライバル店舗が移転したことで客足が増えてきた、という話を上司がしてきた。
 これは大チャンス、と思い、とっておきのことわざを披露。
 「風吹けば桶屋が儲かる、ですね」(何かが起こった事によって第三者が得をする事)
と言うと「あなた、うちの店は雑貨屋ですよ」と言ってきた。
 自分の上司の馬鹿さ加減に嫌気がさす。かといってことわざを解説しては またえらそうになってしまうので
 「えっ! そうでしたっけ!?」と答えると、明らかに怪訝そうな顔。桶屋じゃないのは百も承知だ。

◆4日目
 失敗の原因はタイミングだと気づき、今日は飲み会の席で挑戦。恋愛話で盛り上がっている先輩たち。いつものことながら「電話しても出てくれないの」とか「合コンで電話番号聞かれなかった」とか、ろくな恋愛をしていないことが一発でわかる愚痴の嵐。
 「あー、どうすればいい彼氏に巡り会えるのかねー?」とつぶやく先輩に
 「でも、恋に師匠無し(恋というものは、誰かに教えてもらわなくても自然と学ぶもの、という意味)って言いますもんね、難しいですよね」とさりげなく言うと「だよねー、そうなんだよね!師匠はいないよ確かに。やっぱ自分でやるしかないよね!」と激しくうなずいている。何をやるのか疑問だったけれど、それはさておき波に乗ったことを確信。
 別の先輩が彼氏とケンカして仲直りしてない、と言うので「金持ち喧嘩せず(ケンカをしても得するものがない上に失うものが多いので金持ちはケンカをしないという意味)って言いますよ、先輩!」と声をかけると「は? 私別に金には困ってないし」と言われてしまった。
 焦りは禁物。まさにことわざのとおりだ。

◆5日目
 挑戦を開始して以来、ラッピングの女王には何となく冷たくされている気がする。よっぽど根に持つタイプらしい。不穏な空気に気づいてくれた先輩が「最近××さんとなにかあったの?」と声をかけてくれた。
 すかさず「先輩には肺肝を披いてうち明けます(心を開いて何もかも隠さず打ち明ける事)」
と言ってみた。少し表情がくもったが、お構いなしに
 「正直、冷や飯を食わせられているんですよ(冷たい態度であしらわれる事)」ため息まじりに悩みをことわざで伝えると「んー・・・あなたって、傍若無人(人に構わず自分勝手な行動をする事)なところがあると思うのね。それが××さんの気に障ったんじゃないかしら」
 キツイこと言ってごめんね、と彼女は私から離れたが、キツイことを言われたことよりも、もっともわかりやすいことわざ宸P「傍若無人」を先に言われたことの方が悔しかった。

◆6日目
 昨日、切り札をなくしたことが手痛い。やっぱりここは又、年輩者にぶつけるしかない。
 「今日はレジじゃなくて倉庫整理を担当しなさい」そう命令してきた上司に向かって
 「餅は餅屋(物事にはそれぞれ専門が有り、専門家にはかなわない事)、私は力仕事は苦手です」とことわざ混じりに反論すると「君の得意分野を聞いているんじゃない!」と怒鳴られてしまった。
 ことわざに挑戦してから6日目にしてかなりのまずい状況に陥っている。覆水盆に返らず、だ。(一度してしまった事は取り返しがつかない事)
 自分に対してはことわざが胸にいたいほど響くのにどうして他人には伝わらないんだろう?

◆7日目
 たった6日しか経っていないのに、ことわざのすばらしさを伝えるどころか他人に白い目で見られてばかり……。どうすればいいのかな、と昼休みにパラパラとことざわ辞典を読んでみる。こんな時こそことざわに教えてほしい。
 すると、「押してだめならひいてみな」(目的に対してがむしゃらに押し進めるだけではダメ)ということわざが目に入った。よけいなお世話だ。
 …はっとした。ことわざのえらそうな態度にカチンと来る先輩や上司の気分がわかった気がする。こんなにえらそうだからこそ、日常生活に取り入れられることが少ないのかも……ようやく解決の糸口をつかんだ気がした。
 美しく挑戦を続けることこそ私の目標。ここはいさぎよく、押してだめなら引いてみな、の精神で、企画の幕をおろしたいと思います。

 後日、押してだめならひいてみな、まさにその通りでした。ラッピングの女王の機嫌も戻り、包装紙の畳み方などを教えてくれるようになりました。
 終わり良ければすべてよし。以上でございます。


ふたりでいつでも悪ふざけ


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