もう流行りもすたれましたが 「動物占い」によると私のタイプはライオン。
「よいしょされるの大好き」「VIP待遇がなにより好き」そして「おやじギャグ大好き」…
ろくなこと書いてないな、と思った瞬間、友人が「当たってる!」と大爆笑したのです

おやじギャグが好きだなんて自覚はないのですがライオンの名に恥じぬよう
おやじギャグに挑戦してみたいと思います。



◆1日目
職場にいるおやじといえば店長。決して悪い人ではありませんが事あるごとに
「おいおい! それは、おいさん(おじさん)のものだよ」
「まずい酒なんてこの世に存在しないけど、一つだけあるな、酒井マチャアキ!」
などと 誰もが凍り付くおやじギャグを連発するのです。
一瞬にして凍り付いた 職場の雰囲気、 「酒井じゃなくて堺ですよ」などとつっこまれるのをニヤニヤしながら待っている店長を見ていると心が痛んでたまりません。
店長は 「うざい」と言われて久しいのですが、 お父さんっ子の私には、50代男性が冷たくあしらわれているのを見るのはいたたまれないものがあるので、よく「うふふ」「そうですね」などと適当なあいづちを打っているのですが、今日からはお仲間としてがんばりたい……

そんな決心をしつつ、早くおやじギャグを言わないものかと耳をそばだてていると、レジカウンターの下の引き出しからラッピング用紙を探しながら「ラッピング、ラッピング…あったあった、ラッピー、ってか」とつぶやいて「ふふ」と笑っているのです。
もちろんそんなおやじギャグを先輩たちは聞き逃さず「あいつうざい」「寒い」と聞こえるような声量で言うのでたまったもんじゃありません。一昨日から入った新人バイトさんも苦笑している様子。

いつもなら「うふふ」と笑って穏便にやり過ごすところですが今日からはちがう。店長の背後にしのびより「ラッピーヤッピー…私もうれピー」とおやじギャグとしてまったく成立していないコメントをすると「ああ?」と店長に聞き流されました。

新人さんの凍り付いた視線が痛くてたまらなかったです。

◆2日目
昨日私のことを凍り付いた視線で見つめていた新人バイトさんと一緒にレジに立つことに。
「店長って、いっつもあんななんですか?」と質問された。
「昨日、私ふたりになった時、何を考えたのか”ぼく、カトちゃんぺっ!”って言ったんですよ、ありえないですよ。店長かなりヤバいですよ」
店長の名前はカトウと言うんですが。 「ぼく、カトちゃんぺっ!」は、かなり年期の入った自慢の自己紹介ギャグなのです。私も勤めはじめにいきなり言われて凍り付いた記憶があります。

仕事をはじめて4日目にしてすでに悪口を言いはじめた彼女の気持ちもわからなくもない。
でも挑戦は挑戦なので、 思いきって「も一つおまけにだっふんだ!」とこれもおやじギャグなのかわからないまま真正面から言ってみた。

当然彼女の顔はみるみる曇り冷ややかな空気に。彼女との関係修復は不可能な域に達したようです。

◆3日目
「おやじギャグを、今こそおやじギャグを」
そんなことばかり考えているのに、なかなかいいおやじギャグが思い付かず、すっかり職場での口数が少なくなってしまった。
「最近おとなしいじゃん、どうしたの?」先輩が気づかってくれた瞬間。
「いやー、携帯なくしちゃって。でもドコモショップがドコモないんで困ってるんですよ」
少し 苦しいながらもおやじギャグをひねり出せた。
「あんた朝携帯持ってたじゃん」
朝いちばんからメールをパカパカ打っているところを見られていたらしく、おやじギャグどころかただの嘘つきになってしまった。
「あー、買ったんです、ドコモショップじゃないとこで買いました。忘れてましたすいません」
投げやりに言うと怪訝そうな顔をされた。新人バイトにとどまらず先輩との仲にもヒビが入りそうな予感。

◆4日目
おやじギャグのお手本が見たい。店長にまとわりつくように仕事をしていると、お得意のポップ作りがはじまった。店長の書くポップはすごい。お客さまの失笑を買うこともしばしばなのですが…。
つい先日は、入荷したばかりのアロマオイルセットに「アレマー!アロマが自宅で楽しめるぞ!」というポップをつけ1日で先輩に捨てられていました。
それでもめげずに今日は何を書くのかのぞいていると、ハーブの香りがするアイピローに「アーイアイ♪アーイアイ! おさるもよろこぶアイピロー」と書いているのです。
おさるもよろこぶアイピロー…まったく商品の魅力を語っていない。店のイメージにも関わると思うので、そっとはがして帰ってきた。やっぱりおやじギャグを理解するのは難しいかもしれない…弱気になった。

◆5日目
昨日店長が書いたポップのかわりに「つかれた時にハーブの香りのアイピローはいかがですか? クマもむくみもすっきり!」と書いたポップをつけておいた。
すると、私と同じ年令くらいの2人組の女性がお店に入ってきてアイピローに駆け寄っていった。気にしながら見ていると「あれー!? 昨日とちがくなってる!」と騒いでいる。
どうやら昨日の店長のポップを見た女性が、あまりに寒かったらしく、友人に見せようと連れてきたらしい。
私の書いた無難なポップにがっかりしている様子だったので、あわててレジ回りをあさると、出てきた…「アーイアイ♪アーイアイ! おさるもよろこぶアイピロー」。
「あのー…これですよね」100%余計なお世話、そして過剰接客とは思いつつもポップを手に女性に近付いていくと、顔を真っ赤にして「あ、え、いや」とオロオロしている。
「私じゃなくておじさんの店長が書いたんですけど。やっぱりおかしいですよね」と言うと、もう1人の女性が「ありえない…サル…」とつぶやいたかと思うと笑いはじめたのです。
いい笑顔でした。あんな笑顔のもとになったポップを捨てるわけにはいかないと思い、またもとに戻しておきました。
当然1つも売れませんでした。

1週間の挑戦の予定でしたが根本的に無理だと気付いたので早めに切り上げました。おやじギャグの奥深さを垣間見た気もします。ちなみに、完全に敬遠されていた新人バイトさん、先輩との関係は快方に向ってます。人間関係を破壊するパワーがあるおやじギャグは人格の一部なんだと思いました。


ふたりでいつでも悪ふざけ


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